さて、コイウタシリーズもラストスパートです。
最も数の大きい97番もコイウタです。

 

建保六年内裏歌合、恋歌

来ぬ人を  まつほの浦の  夕なぎに
   焼くや藻塩の  身もこがれつつ

          ――権中納言定家(藤原定家) 「新勅撰和歌集」

 

<直訳>
建保6(1218)年の内裏での歌合せのテーマ「恋の歌」において

逢う約束をしたのに待てども来てはくれない人を待つ私は、
あの松帆の浦の夕なぎの時に焼いている藻塩のように、
恋焦がれ恋い慕っているのですよ。

 

<文法など>

「松帆(まつほ)」
今の兵庫県淡路市岩屋(34°36′32"N、135°0′10"E)にある、
松帆崎のこと。淡路島の最北端で明石と対峙する。
”待つ”との掛詞にもなっている。

「凪(なぎ)」
朝と夕方、陸上(熱しやすく冷めやすい)と
海水面(熱されにくく冷めにくい)の温度差がなくなって
対流が起こらず風が止んでいる状態のこと。

「焼くや藻塩(もしほ)の」
品詞分解すると、「焼く - や - もしほ - の」。
”や”は間投助詞で語調を整える役割、
”の”は格助詞で「~のように」の意味。
藻塩は、海藻から採る塩のこと。
古い製法で、海藻に海水をかけて干し乾いたところで焼き、
それを水に溶かして、さらに煮詰めて塩を精製する。

「まつほの~もしほの」は「こがれ」にかかる序詞。

「焼く」、「藻塩」、「焦がる」は縁語。

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